テロリストのパラソル/藤原伊織著/講談社文庫
積読消化が一通り終わり、新しい本を仕入れる前に、再読したかった本を。
ホットドッグが食べたくなりました。
「なににしますか」
「ビール二本。それとメニュー」
「あいにくメニューがなくてね」
「なら、なにがあるんだよ」
「ホットドッグ」
「ほかには?」
「いや、ホットドッグだけ」
「なんだよ。バーやってて、つまみがホットドッグだけってか」
「冗談いってんじゃないだろうな」
「客商売です。冗談はいわない」
「世も末だな。チンケなバーもあったもんだ。ホットドッグとはな」
「店の方針なんです。この単純さを気に入ってくれるお客もいる。もし、なんでもそろってるようなところをお望みならここはふさわしいとはいえませんね。新宿は広い。お客さん向けの店なら腐るほどある」
「てめえ、だれにものいってんだ」 「まあいい。そのホットドッグをふたつもらおうか」
「なんだ、注文があってからキャベツを切るのかよ」
「そうです」
「めんどうじゃねえか」
「めんどうじゃないことをたくさんやるか、めんどうなことをひとつしかやらないか。どちらか選べっていわれたら、私はあとを選ぶタイプでね」
「ややこしいことをいいますね。このバーテン」 「ケチな男だよ」「実際、ケチな野郎だ。けどインテリだな。能書きを並べるケチなインテリだ。そんなやつほど話に筋をとおそうとするんだ。おれのいちばん嫌いなタイプだ」
「へえ。うまいですね、これ」 「ああ」「おれの口にゃあわねえが。そうだな、たしかにこりゃよくできてる」
「それはどうも」
「かんたんなものほど、むずかしいんだ。このホットドッグは、たしかによくできてる」
・・・
「ほんとに損な性格してるよ。おまえさん」「しかしあのときな、あのホットドッグ食って、おれは少々考えが変わったんだ。あんた、料理の修行をしたことがあるのか」
「したといえるほどじゃないな。だが、とんかつ屋で働いていたことがある。見習いのときはキャベツばかりを切ってたんだ。だから、キャベツを切るのは自信がある」
「しかし、なんでホットドッグなんだ」
「私は大阪育ちだ。阪神ファンだった。小学生のころ、叔父が甲子園へ連れていってくれたことがある。球場で買ったかのかどうかは覚えていないが、とにかく外野席でホットドッグを食べた。世の中にこんなにおいしいものがあるのかと思ったよ。いつか、自分でつくろうと思った」
2024年5月31日金曜日
テロリストのパラソル/藤原伊織著/講談社文庫~再読
2024年5月23日木曜日
ヨルガオ殺人事件/アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳/創元推理文庫
ヨルガオ殺人事件/アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳/創元推理文庫
先日読んだアンソニー・ホロヴィッツはホーソーン&ホロヴィッツ シリーズでしたが、こちらはスーザン・ライランド & アティカス・ピュントシリーズの二作目。こちらも最高に楽しめました。上下で850頁ほど一気読みです。
『・・・作家はみな、ひとりひとりちがうものよ。それに、正確に言うなら、けっして盗むわけじゃないの。自分の中に取り入れるだけ。本当に奇妙な職業よね。自分が属している現実の世界と、自分が作りあげた虚構の世界との、ほの暗い境目に生きているような人たちなのよ。ある意味では、おそろしいほど自己中心的な人種ともいえるかな。自信、自省、はては自己嫌悪・・・とにかく、意識はすべて自分に向いているわけ。あれだけの長い時間、たったひとりで書きつづけているんだものね!でも、同時に、心底から利他主義的な人たちでもある。望んでいるはただひとつ、ほかの人たちを楽しませたいということだけなんだから。何かが欠落している人しか作家になれないんじゃないかって、わたしはよく思うの。人生から何かが失われているからこそ、そこを言葉で埋めようと必死になるんだ、って。・・・』
『「アラン・コンウェイのような人間の書くミステリなどというものには、これっぽっちも現実が反映されてはおらんのだ。そんなことはないと思っている人間がいたら、それはただの大馬鹿ものさ。この世に私立探偵などというものも存在しないー十代の息子の素行を調べたり、旦那の浮気相手が誰なのかつきとめたりしてくれる連中をのぞけばな。現実の殺人事件は、藁葺き屋根の田舎家や立派なお屋敷などで起きることなどめったにないーそれを言うなら、海辺のひなびた村でもな。やれやれ、『愚行の代償』か!あの中に一ヶ所でもーそう、ほんの一ヶ所でいいーくだらんたわごと以外の文章があったら教えてほしいものだな。何もない田舎のお屋敷を買うハリウッドの女優。ダイヤモンドをめぐる騒動。玄関のテーブルに置かれた短剣。つまりーまったく、勘弁してくれ!ああいう本の中じゃ、テーブルに短剣が置いてあったら、それは絶対に誰かの胸に突きたてられることになるんだからな」
「・・・あなたはミステリというものを誤解しているんじゃないかと思うんです、警視正。 ・・・ 読者はみな、これらの作品を楽しんでいますし、自分が何を求めてこういうものを読むのかも、よくわかっているんです。けっして現実がよく描けているものを探しているわけじゃなくて、むしろ一時でも現実から離れたいんですよーそんなの、誰だって同じじゃありませんか。ニュースは二十四時間ずっと流れています。フェイク・ニュースだって。政治家がやることといえば、相手を噓つきだとののしるか、そうでなきゃ自分が嘘をたれながすか。そんなときに、ちゃんと筋の通った世界が描かれ、最後にはまちがいなく真実にたどりつく本を読むのは、疲れた心をいくらかでも癒してもらえるからじゃないんでしょうか」』
この本もキープです。
2024年5月18日土曜日
ナイフをひねれば/アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳/創元推理文庫~積読消化
ナイフをひねれば/アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳/創元推理文庫
ホーソーン&ホロヴィッツ シリーズ4作目。アンソニー・ホロヴィッツは好きな作家。今回もよくできた作品でした。
『・・・だが、物語というのは、そもそも共有するものだろう。そのために物語が存在している。と言ったっていい。それぞれ別の立場にあるわれわれをつないでくれるのが、まさに物語なんだ。そんなふうにして、われわれはお互いを理解しようとする。その理解こそが、わたしの仕事のいちばん大切な部分なんだよ・・・
・・・じゃ、理解しようと努めることさえ許されないというわけか?そうなったら、いったいわたしに何が書ける?さっきの話では、アフメトやプラナフについても書いてはいけないということだったな。それなら、モーリーンやスカイのことも書けない・・・どちらも女性だからね!ラッキーのことも書けない。こいつは犬なんだから!きみの言うことを聞いていたら、結局は自分自身のことしか書けないじゃないか!中年の白人男性作家に殺される中年の白人男性作家の本を、中年の白人男性作家が書きあげる、ってわけだ!』
この本はキープです
2024年5月11日土曜日
2024年4月30日火曜日
正義の弧/マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳/講談社文庫~積読消化
正義の弧/マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳/講談社文庫
上下巻計600ページ強をグイグイ読ませるのはさすがマイクル・コナリー。アメリカの都市犯罪をテーマに扱った超娯楽小説です。なぜ原題のDesert Starから変更したのか疑問。
2024年4月20日土曜日
死の味(新版)/PDジェイムズ(著)/青木久惠(訳)/ハヤカワ・ミステリ文庫~積読消化
死の味(新版)/PDジェイムズ(著)/青木久惠(訳)/ハヤカワ・ミステリ文庫
PDジェイムズは好きなミステリ作家。この『死の味』も素晴らしい作品でした。珍しくラストにアクションシーンがありますが、そこだけちょっと違和感。それを差し引いても楽しめました。上下合わせて900ページ弱ありますが、じっくりと読んで欲しいです。
『・・・まあね。店の敷地内で死人が出て、喜ぶレストラン店主もいない。死は生の真只中にも訪れるが、食事の最中は困る。運の悪いロブスターを、生きながら煮湯に落とすのと、店の敷地内で客が溺死するのとでは、話がまったく別ということらしいですね。ロブスターが何も感じないなんて、どうして言えますか。・・・』
『・・・そして自分の通った学校を思い出した。アンクロフト総合中学校にもちゃんと宗教があった。時代の先端をゆく、そして二十ヵ国の人種の集まる学校としては都合のいい宗教。人種差別反対である。この基本教義に忠実でありさえすれば、どんな反抗、怠惰、愚昧もとがめられない。ケイトは、人種差別反対が他の宗教とそっくりなのに気がついた。自分に好都合な意味づけができるし、習得は容易。陳腐な言葉を二、三と神話、それにスローガン。寛容性に乏しくて、相手を差別して攻撃する際に都合のいい口実を与えてくれる。嫌いな相手を見下しても道徳的な善をなしたと思える。とりわけて素晴らしいのが、一銭もかからないことだ。ケイトは人種差別を目の当たりにした時、たとえば猥雑な落書きや侮蔑のことばを浴びせかける声、家に立てこもって、外に出るのを怖がるアジア系の家族に出くわした時など、冷たい怒りが全身を走るが、それと子供の頃の教化とは無関係と思いたかった。連帯の幻想を抱くために校風が必要なら、ケイトにしれみれば人種差別反対は決して悪くない。人種差別反対がどんな馬鹿げた形をとったとしても、埃っぽい教会で幻を見ることになるはずがないのだから。』
『・・・それに彼だって、私にミサに出席してほしくないでしょ。来るとは思っていないわよ。彼自身、ああいうことは大嫌いなはずだわ。そりゃあ、何もかも素晴らしく趣味がいいんでしょ。念入りに選んだ言葉や音楽、立派な衣装、立派な参列者。でも褒め讃えられるのはパパじゃない、個人じゃないのよ。階級、政治哲学、特権クラブを讃えるだけだわ。お祖母さまたちって、自分たちが育ってきた世界が死んだことが、どうしても納得できないのね。もう死んだのよ。』
この本はキープです
2024年4月11日木曜日
深夜プラス1(新訳版)/ギャビン・ライアル著/鈴木恵訳/ハヤカワ文庫~積読消化
深夜プラス1(新訳版)/ギャビン・ライアル著/鈴木恵訳/ハヤカワ文庫
ハードボイルドの原典的な作品。一気に読めてしまいます。是非他の作品も新版で出してほしい。フランス・スイスの地図を片手に読むことをお勧めします。
表紙の絵は拳銃ではなくて、シトロエンDSか1930年式ロールスロイス・ファントムⅡにして欲しかった。
『・・・モントルーはイギリスの金持ちが死ににくる場所のひとつだ。バーミューダやナッソーは俗でアメリカっぽいうえ、現地人が生意気になっている―そう考える人種にここは向いている。モントルーの現地人は決して生意気にならない。九月から五月まで、ホテルはローストビーフとカレーしか出さないし、それもうまく料理しすぎないように細心の注意を払っている。ダイニングルームは品のいい老婦人であふれ、こちらのシェル石油株の最後の半ダースまでむしり取るような冷たい眼を向けてくる。顎鬚をはやしたりギターを持ったりしていたら、正午に車椅子の大軍に轢かれて処刑される。』
この本はキープです
2024年4月10日水曜日
2024年3月28日木曜日
処刑台広場の女/マーティン・エドワーズ著/加賀山卓朗訳/ハヤカワ・ミステリ文庫~積読消化⑤
処刑台広場の女/マーティン・エドワーズ著/加賀山卓朗訳/ハヤカワ・ミステリ文庫
登場人物の多さと、とっつきにくい言い回しで骨が折れ、ちょっとした苦行。都合よく展開しすぎでしょう。魅力的なヒロインが格好良く、そこは読みどころ。
2024年3月24日日曜日
8つの完璧な殺人/ピーター・スワンソン著/務台夏子訳/創元推理文庫~積読消化④
8つの完璧な殺人/ピーター・スワンソン著/務台夏子訳/創元推理文庫
ある男の物語といったところ。聖地巡礼ではないですが、アメリカ・ニューイングランドに行きたくなりました。
『・・・わたしは昔から、不朽であろうとする文芸作家たちに疑いを抱いていた。スリラー作家や詩人の方がはるかに好きなのも、そのためだ。わたしは、負け戦を承知で戦っている作家たちが好きなのだ。・・・』
2024年3月22日金曜日
弁護側の証人/小泉喜美子著/集英社文庫~積読消化③
弁護側の証人/小泉喜美子著/集英社文庫
昭和38年2月に文芸春秋新社より書き下ろし単行本として刊行された作品で、馬事公苑のTSUTAYA閉店の日に買って積読になっていた本。帯に「物語は180度ひっくり返る」と謳っちゃっているので、、、
十角館の殺人/綾辻行人著/講談社文庫~積読消化②
十角館の殺人/綾辻行人著/講談社文庫
綾辻作品はそこそこ読みましたが、このデビュー作はまだ読んでいませんでした。3/22からHuluで配信が始まるとのことで、前日に一気読み。犯人はすぐに分かりましたので、衝撃の1行ってことは無かったです。エンタメとしては楽しめました。
『・・・だから一時期日本でもてはやされた”社会派”式のリアリズム云々は、もうまっぴらなわけさ。1DKのマンションでOLが殺されて、靴底をすりへらした刑事が苦心の末、愛人だった上司を捕まえる。~やめてほしいね。汚職だの政界の内幕だの、現代社会のひずみが産んだ悲劇だの、その辺も願い下げだ。ミステリにふさわしいのは、時代遅れと云われようが何だろうがやっぱりね、名探偵、大邸宅、怪しげな住人たち、血みどろの惨劇、不可能犯罪、破天荒なトリック・・・』
2024年3月21日木曜日
その可能性はすでに考えた/井上真偽著/講談社文庫~積読消化①
年間有休取得義務という制度のおかげで積読消化中、その①
その可能性はすでに考えた/井上真偽著/講談社文庫
一気読み。もっと早くに読んでおくべきでした。めちゃくちゃ面白い
『・・・そもそも人間など、神に見捨てられて当然の糟粕だ。この血と暴虐、私利私欲、自己保身と他者への無関心で綴られた、人類史の残酷滑稽絵巻を見てみろ。誰も人間を上等な生物などとは思うまい。
むしろ怒りを覚えるなら、神の気まぐれな恩寵のほう~見捨てるなら等しく見捨てよと思う。線を引いた右側で幸せな家族の団欒の明かりが点り、左側で不幸と痛苦と慟哭が飛び交うこの世界の有り様は、何とも歪で滑稽だ。美しき調和のとれた自然を造った造物主が、なぜにこんな人間社会の不調和だけを放置するのか。・・・』
2025/8/23(土) ハムフェア2025
新橋からBRTで会場へ アイコム、ヤエス無線、ケンウッド、AOR、Unidenを見て回り 自作品コーナーで皆さんの力作を拝見して唸るばかり 戦利品は今回少な目でした 戦利品 50MHz アンテナカプラー Leader LAC-896 2,000円 FET VOM Trio ...
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●マレーシア ~ Wai FM 音楽を流すとノイズっぽく聞こえていましたので、何か不具合があったのかもしれませんね。日の出が早くなったことに伴い、6月以降は良好に受信できる夜ワッチに切り替えました。 2022/4/19 06:57-08:00 11665kHz Wai FM マレ...
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2019/9/22 (Sun) (Logging) All Times in JST 05:40 9705kHz Vatican Radio?, 判別できず, 25221 OM talk 05:58 12095kHz BBC via Ascension?, Eng...
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宮城@世田谷区です 台風19号 今日は15時以降、頻繁に特別警戒情報、避難情報がけたたましいアラート音とともに 携帯に届く状態でした 22時を過ぎてようやく雨・風のピークは過ぎたようです 一方、多摩川が氾濫したようで、付近にお住いの方はこれからさらに警戒が必要です ...