2024年4月20日土曜日

死の味(新版)/PDジェイムズ(著)/青木久惠(訳)/ハヤカワ・ミステリ文庫~積読消化

死の味(新版)/PDジェイムズ(著)/青木久惠(訳)/ハヤカワ・ミステリ文庫

PDジェイムズは好きなミステリ作家。この『死の味』も素晴らしい作品でした。珍しくラストにアクションシーンがありますが、そこだけちょっと違和感。それを差し引いても楽しめました。上下合わせて900ページ弱ありますが、じっくりと読んで欲しいです。


『・・・まあね。店の敷地内で死人が出て、喜ぶレストラン店主もいない。死は生の真只中にも訪れるが、食事の最中は困る。運の悪いロブスターを、生きながら煮湯に落とすのと、店の敷地内で客が溺死するのとでは、話がまったく別ということらしいですね。ロブスターが何も感じないなんて、どうして言えますか。・・・』

『・・・そして自分の通った学校を思い出した。アンクロフト総合中学校にもちゃんと宗教があった。時代の先端をゆく、そして二十ヵ国の人種の集まる学校としては都合のいい宗教。人種差別反対である。この基本教義に忠実でありさえすれば、どんな反抗、怠惰、愚昧もとがめられない。ケイトは、人種差別反対が他の宗教とそっくりなのに気がついた。自分に好都合な意味づけができるし、習得は容易。陳腐な言葉を二、三と神話、それにスローガン。寛容性に乏しくて、相手を差別して攻撃する際に都合のいい口実を与えてくれる。嫌いな相手を見下しても道徳的な善をなしたと思える。とりわけて素晴らしいのが、一銭もかからないことだ。ケイトは人種差別を目の当たりにした時、たとえば猥雑な落書きや侮蔑のことばを浴びせかける声、家に立てこもって、外に出るのを怖がるアジア系の家族に出くわした時など、冷たい怒りが全身を走るが、それと子供の頃の教化とは無関係と思いたかった。連帯の幻想を抱くために校風が必要なら、ケイトにしれみれば人種差別反対は決して悪くない。人種差別反対がどんな馬鹿げた形をとったとしても、埃っぽい教会で幻を見ることになるはずがないのだから。』

『・・・それに彼だって、私にミサに出席してほしくないでしょ。来るとは思っていないわよ。彼自身、ああいうことは大嫌いなはずだわ。そりゃあ、何もかも素晴らしく趣味がいいんでしょ。念入りに選んだ言葉や音楽、立派な衣装、立派な参列者。でも褒め讃えられるのはパパじゃない、個人じゃないのよ。階級、政治哲学、特権クラブを讃えるだけだわ。お祖母さまたちって、自分たちが育ってきた世界が死んだことが、どうしても納得できないのね。もう死んだのよ。』

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